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イングランド北西部に位置するチェシャー州。穏やかな気候に恵まれ、庭園が多い英国の中でも公開されている庭園数は、住民1人当たり一番だという。今年、庭園の祭典「イヤー・オブ・ガーデン」が開かれている。州内の5つの庭園を訪れ、英国を堪能した。
アッシュブルック子爵が所有する「アーリー・ホール&ガーデン」に足を運んだ。絨毯(じゅうたん)のような芝生の道を行くと、デルフィニウムの鮮やかな青が目に飛び込んできた。涼しげな白や薄紫の花々、銀白色の葉の間で、アストランティアの深紅の花が映えて見えた。
ここは800ヘクタール以上という領地の一部が邸宅と庭園として公開されている。一族は500年以上前からここに住み、庭の歴史は約260年前までさかのぼれる。1960年代に公開を始め、多数の人が訪れる名所になっている。中でも人気は「ハーベイシャス・ボーダー」と呼ばれる細長い庭だ。
レンガ塀やイチイの生け垣に沿った8つの花壇に、それぞれ30種類以上の草丈の違う宿根草が、立体的に植えられていた。草花の種類は160年以上前からほぼ変わっていないという。ほかにも円柱形のトキワガシの並木道やバラのかん木の庭、キッチンガーデンなどが美しく整えられていた。
庭園のどこでも感じられたのが、子爵が何度も口にしていた「親密感」という言葉。長年にわたり、人々の愛情や思い出が蓄積されてきた「家族の庭」だからだろう。
リバプール大学付属の「ネス植物園」へ。ここは19世紀末、裕福な商人の植物への情熱から生まれた。綿商人のアーサー・キルピン・ブリー氏が、リバプール港に集まる船の船長や有名な植物コレクターに依頼して、中国やヒマラヤの植物を収集。自宅に植えたのが始まりという。
起伏に富んだ園内では、アジア原産というシャクナゲが花盛りだった。植物園はブリー氏の死後、娘により大学に寄付された。今は自然教育などに利用されている。双眼鏡やクイズが入った子ども向けの「探検セット」も用意されており、庭師のポール・クックさんは「ここを科学に出合う場にしたい」と話した。
「チャムリー城」は5人の常勤庭師とパートタイマー2人が手入れをし、自然の景観を巧みに生かしている。
州都チェスター郊外のサイモン・カーターさん(56)の自宅「グラフトン・ロッジ」では、満開のオールド・イングリッシュローズが強い香りを放っていた。普通の家庭の可憐(かれん)な庭も一般公開されているのは、ガーデニングが盛んな英国ならではだろう。
サイモンさんは14年前、草原だったこの土地に移り住み、風よけの生け垣づくりから始めた。事務弁護士の仕事を終えると家へ飛んで帰り、庭づくりにいそしんできた。その自慢の庭を年に2日間だけ一般公開している。入場料は全国組織ナショナル・ガーデン・スキームのチャリティーに寄付。3年前から参加しており、今年は約250人が訪れた。「庭好きな人たちと熱意を分かち合えるのが楽しいよ」と笑顔。
自然や歴史的名所の保護団体ナショナル・トラストが所有する「タットン・パーク」で出会ったエバちゃん(6つ)にとっては、庭園は病院通いの「ごほうび」だ。腎臓の病気のため、定期的に学校を休んで点滴を受けなければならないが、帰りに母親がここへ連れてきてくれるのが楽しみという。「バラがいちばん好き」とうれしそうに言う姿に、ピンクの花が寄り添っていた。