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北京五輪開幕―「限界への挑戦」が始まる

2008年8月8日

世界には実にさまざまな人々がいる。だれもがそのことに目をみはるに違いない。肌の色も、言葉も、宗教も異なる205の国と地域から選手が集まり、北京五輪がきょう開幕する。

 205の国・地域といえば、国際オリンピック委員会(IOC)に加盟するすべてのメンバーである。加盟国・地域がこぞって参加する大会は、長い五輪の歴史の中でも2大会連続3度目というのだから、その意味も大きい。

 さて、このスポーツの祭典の魅力は、何よりも人が持つ能力の限界を競い合うことだ。より速く、より高く、より強く、である。

 陸上の男子100メートルには新旧3人の世界記録保持者が挑む。そのなかで5月に9秒72の新記録を出したウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)はまだ21歳の若者だ。

 サッカーに夢中だった少年は、陸上を始めても専門は200メートルだった。100メートルに取り組んだのは今年からだ。それなのに、今や世界中から目標にされる存在である。

 スポーツでも英才教育が進む一方で、粗削りの才能が突然開花することがある。ジャマイカからやって来る196センチの超大型ランナーはその象徴だろう。

 一つの大会での金メダル獲得は、72年ミュンヘン五輪競泳のマーク・スピッツ選手(米)が最も多く、7個だった。同じ水泳王国の後輩にあたるマイケル・フェルプス選手は、それを超える8冠に挑む。種目の専門化が進むなかで、その万能ぶりは驚きだ。

 挑戦するのは、金メダルに対してだけではない。みずからの年齢や限界を超える闘いもある。

 馬術の法華津(ほけつ)寛、八木三枝子の両選手は67歳と58歳だ。今大会で男女の最年長選手である。米国の女子競泳のダラ・トーレス選手は41歳だ。2度の引退をへて、5度目の五輪になる。

 初参加の国が三つある。モンテネグロは2年前に独立を果たしたばかりだ。人口約1万人の島ツバルは、温暖化による海面上昇という大きな心配事を抱えての参加だ。太平洋からはマーシャル諸島の選手もやって来る。

 戦争や貧困、環境問題。そんな国際社会の現実からいっとき離れて、世界の人々が4年に1度、スポーツで競い合う。そしてテレビ中継を通じて同じ時間と感動を共有する。そのことの意味は決して小さくない。

 もちろん、五輪が抱える問題はある。たとえば、テレビの放映権料を当てにしての大会運営のゆがみ、選手の薬物使用などは悩みの種だ。

 ギリシャでの古代五輪は1200年近く続いたが、最後は拝金主義や薬物の使用が横行し、幕を閉じたという。

 競技の放つ興奮を楽しみつつ、五輪の将来を考える大会でもありたい。