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2008年8月10日
旧ソ連崩壊で独立した新興国のひとつ、黒海沿岸のグルジアで、激しい戦闘が始まった。グルジア政府軍と隣国ロシアの軍がぶつかり、砲撃戦や航空機による爆撃などで多数の犠牲者が出ていると伝えられる。
争いは、グルジアのロシア国境に面した南オセチア自治州をめぐって起きた。オセット人という少数民族が多く住むところで、国境をはさんだロシア側の北オセチア共和国と一緒になりたいと要求し、グルジアの独立前後から政府側との武力衝突が続いてきた。
ロシア軍が平和維持軍として展開して大規模な戦闘はなくなったが、事実上、グルジア国内の小さな独立国のような存在になっている。
今回の衝突がどんなきっかけで始まったのか、はっきりしない。グルジア政府軍が自治州の制圧を目指して進攻し、ロシア側が反攻に出て戦闘が広がったというのが大きな構図だ。
国連の安保理が緊急招集されたが、ロシアと米国などが対立して身動きがとれない。ロシアは自らの利害や思惑をひとまず置き、戦闘の即時停止に動かねばならない。それが拒否権を持つ常任理事国としての責任だ。
米国も仲介に入るべきだ。グルジアのサアカシュビリ大統領(40)は米国で学び、ニューヨークの法律事務所で勤務した経歴を持つなど、米国との結びつきは深い。ロシアとの対立を強める同大統領を米国が支えてきた面もあるのだから、責任の一端は免れまい。
南オセチアをめぐる対立には、単なる少数民族の問題を超えて、国際政治のパワーゲームが絡んでいる。
グルジアは独立以来、北大西洋条約機構(NATO)入りを目指すなど、ロシア離れを鮮明にしてきた。その一方で、カスピ海周辺の原油や天然ガスのパイプライン・ルートとしての戦略的な重要性も増している。
だからこそ、90年代の経済困窮から立ち直ったロシアは、経済封鎖に近い強硬策でグルジア政権を締めつけ、影響力を強めようと動いてきた。南オセチアやアブハジアなどの親ロシアの分離独立運動を支えてきたのも、そうした思惑と無縁ではないはずだ。
なおさら西側への傾斜を強めるサアカシュビリ政権に対し、米欧は協力姿勢を見せるものの、ロシアとの決定的な対立は避けたいという本音ものぞく。今回の武力進攻には、そんな煮え切らない米欧を強引に動かそうという計算もあったのかもしれない。
南オセチアが分離するか、自治州にとどまるか。これを軍事で決着しようとなれば、旧ソ連のあちこちに残る少数民族問題が火を噴き上げるのは間違いない。戦闘をやめ、対話のテーブルにつく。これしか方法はない。
国際社会は、国連などを使ってそれを後押ししなければならない。