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グルジア紛争―米ロの対立を懸念する

2008年8月16日

まるで冷戦時代に逆戻りしたかのように、米国とロシアがにらみ合う。

 グルジア紛争が始まって1週間あまり。フランスが和平案を仲介し、圧倒的な軍事力でグルジア領内に兵を進めたロシアも撤収の動きを見せ始めた。

 だが、ブッシュ米政権はロシア非難のトーンを上げ、「人道支援」を掲げて米軍の輸送機をグルジアへ派遣した。軍事介入の可能性は否定しているものの、ロシア軍の動きを牽制(けんせい)しようとの狙いは明らかだ。

 黒海とカスピ海にはさまれた旧ソ連・カフカス地方の局地紛争が、米国を巻き込んでエスカレートしている。

 冷戦後、米ロ両国がここまで非難の応酬を繰り広げるのは異常だ。このまま事態が悪化すれば、世界がこうむる打撃は計り知れない。

 そうした事態を防ぐため、ロシアは和平案を履行しなければならない。まずは、紛争前に展開していた地点まですみやかに部隊を撤収すべきだ。

 なぜ、こんなことになったのか。

 今回の紛争は、グルジア軍が南オセチア自治州の分離勢力を攻撃したことが発端だったようだ。ロシアの平和維持部隊や自治州の住民に多数の犠牲者が出た、とロシアは主張している。

 だが、グルジアの港湾や都市まで空爆するなど、ロシア軍の対応はどうみても過剰のそしりは免れまい。撤兵の動きの鈍さも、グルジア親米政権の追い落としを画策しているのではないかと勘ぐられても仕方なかろう。

 グルジアも冷静になる必要がある。サアカシュビリ大統領は人道支援の米軍が「空港や港湾も管理する」と発言して、米側があわてて否定している。これ以上ロシアを刺激するよりも、停戦実現を最優先すべきだ。

 旧ソ連のグルジアは03年の「バラ革命」以後、親米路線に傾斜した。米国は軍事顧問団を駐在させるなどして、てこ入れしてきた。北大西洋条約機構(NATO)入りの希望も後押ししている。しかし、ここはグルジアに自制を働きかけるべきだ。

 カフカス地方は、ロシアにとっては自らの「勢力圏」の一部という意識が強い。そこに米国の影響力が増せば、ロシアの不安をかきたてないではおかない。その危うさを、今回の事態は映し出している。

 同じように「勢力圏」だったバルト3国やウクライナ、さらにポーランドまでが、グルジアとの連帯を表明している。米ロはミサイル防衛(MD)の欧州配備でも対立している。このままでは、冷戦後に築いてきた欧州の安定が損なわれかねない。

 欧州連合(EU)が停戦監視団を派遣する意向だ。欧州安保協力機構(OSCE)のメカニズムも使えるはずだ。停戦の実現と紛争の沈静化を急がねばならない。