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スーパーマーケットは、隠れた「観光名所」だと思う。どこの国でも、普段着の生活に触れることができる。ドイツ西部の町・人口25万人のアーヘンでも、お土産にチョコレートを買おうと入ってみた(空港で買うと高いし…)。
チーズ、肉類が豊富。付け合わせのピクルスも充実している。乳製品の棚にヤクルトが置いてあったのにも驚いた。ただ、レジは2つしかない。長蛇の列の両側には、お菓子がずらり。案の定、並び疲れた子供が「買って」とねだっていた。当然、お母さんはうんとは言わない。日本から時差マイナス7時間(夏時間)のドイツでも、市井の光景は同じだ。こういう「発見」も楽しい。
支払いを済ませた。でも、ポリ袋をくれない。レジ横に束になっていたので自分で取ろうとすると、店員の女性がドイツ語で話しかけてきた。「?」。困っていると、客の一人が英語で「それも売り物ですよ」と教えてくれた。見ると皆さん、買い物袋を持参。日本ではなかなか根付かない習慣が、ここでは常識になっていた。少し感心した。
町にも、ごみ一つ落ちていない。車の入ってこない旧市街の散歩は快適だ。市庁舎前の広場では、週3回の市場が開催中。ジャガイモだけでも十種類近く。花、パスタ、あふれんばかりの野菜。ドイツ以外のナンバーの車も多い。オランダから5キロ、ベルギーから7キロ。アーヘンは国境の町だ。各国語が行き交い、笑い、値段交渉し、買い物を楽しんでいる。「三カ国のコインを使ってきたので、通貨がユーロに変わっても戸惑いはありませんでした」と、観光ガイドのウルズラ・ボルシュさん(48)。
市場を抜けると、世界文化遺産のアーヘン大聖堂がそびえる。8世紀後半、フランク国王のカール大帝がこの地を都と定め建設した。以後六百年にわたり、神聖ローマ帝国皇帝の戴冠式の舞台となった。中に入ると圧巻。高さ32メートルの天井には色鮮やかな宗教画が描かれ、壁面のステンドグラスも見事だ。欧米からの観光客が感嘆の声を上げている。日本人にはぴんとこないが、この町の歴史は、西洋の人々を引き付け続けている。
ここは、温泉でも有名だ。18、9世紀には、貴族たちが療養に集まってきた。「女性遍歴で有名なカサノバ(1725-98年)も三回、訪れています」とボルシュさん。今でも、地下4000メートルから74度のお湯がわいている。市内には噴出口があり、カップを持った市民が飲用にしている。湯治客も多い。
夜は市民の集まる居酒屋に行った。大型スクリーンでは、サッカーの試合を放映中。客は全員、ドイツ国内リーグのブンデスリーガ二部に所属するアレマニア・アーヘンのサポーターだ。36年ぶりの一部昇格に望みを残し、そのために負けてほしいチームが試合中で、ビール片手に熱心に観戦している。結果は、そのチームの勝ち。なんともいえないため息が店内に満ちた。
まだ、眠るのには早い。この町にはカジノがあるのだ。一応、ネクタイを締めパスポートを持って勇んで出かけた。20ユーロ(1ユーロ=約142円)だけチップに変えた。「グッドラック」。受付の男性がウインクしてくれる。2ユーロから賭けられるルーレットのテーブルでは、白髪のおばあちゃんがほおづえをついて勝負を楽しんでいたりして、とてものんびりした雰囲気だ。市民のほか、観光客も多い。ちなみに私は120ユーロ勝った。
帰国後、アーヘンから朗報が届いた。アレマニアが一部昇格を決定! あの居酒屋で、サポーターたちはどんなに喜んだことだろう。ビールジョッキをかち合わせる音が聞こえてくるようだ。