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ムシャラフ氏辞任―民主化を安定につなげよ

2008年8月19日

「対テロ戦争」の最前線に立つパキスタンで、9年余りも権力を握ってきたムシャラフ大統領が、辞意を表明した。反対派がおさえる議会から弾劾手続きを突きつけられ、進退が窮まった末のことだ。

 テレビ演説にのぞんだムシャラフ氏は、「議会との対立がこれ以上深まるのを望まない」と決断の理由を述べた。自ら身を引いて政治的な混乱を回避しようという姿勢は評価できる。この機会に選挙で選ばれた政党が協力し、民主的で安定した政権づくりを急がなければならない。

 パキスタンの政治は、腐敗した政党政治と軍の粛正クーデターの繰り返しで揺れ動いてきた。陸軍参謀長だったムシャラフ氏が権力を握ったのも、政党の腐敗が原因だった。こうした不毛な権力争いに終止符を打つべきだ。

 ムシャラフ氏はすでに、内外の信頼を失っていた。昨年10月の大統領選で再任を果たしたものの、参謀長を兼任していたため、違憲の疑いがあると最高裁に指摘された。すると、非常事態を宣言して最高裁長官らを解任してしまった。

 年末には、人気の高かった野党指導者ブット氏が、選挙運動中に自爆テロで暗殺された。この悲劇の真相はまだ究明されていない。

 今年2月の総選挙で与党が惨敗した時点で、国民から不信任を突きつけられていた、と言えるだろう。

 この政権を、米国が「対テロ戦争の盟友」として支えてきた。ブッシュ政権にとって、9・11同時多発テロ以後のアフガニスタン侵攻はパキスタンの協力なしでは不可能だった。国内での強権的な対応には目をつぶって、巨額の軍事援助を与えてきた。

 パキスタンの情報機関はかつてタリバーン勢力を育てて、アフガニスタンでの政権奪取に協力したと言われる。米国には、ムシャラフ氏以外では、この強大な情報機関と軍部を抑えられないという読みもあったようだ。

 だが、現状ではアフガニスタンの治安は悪化する一方だ。タリバーン勢力はパキスタン領内の部族地域に拠点を移しているといわれるが、ムシャラフ氏はその掃討には及び腰だった。

 米国の対テロ戦争に協力するほど、国内でイスラム過激派の台頭を招く。こうした矛盾はなお続くが、これから対テロ戦争の正面に立つのは、選挙で選出された政府であり、国会である。

 パキスタンのような核保有国が政情不安定に陥ったなら、テロリストによる核兵器の入手など最悪の事態も起こりうるかもしれない。イスラム過激派や軍強硬派の台頭を決して許してはなるまい。

 テロとの戦いも、核の不拡散も、民意に基づいた政治が主導しなくてはならない。