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欧州ミサイル防衛―急がず、配備の凍結を

2008年8月22日

米国のミサイル防衛(MD)システムをポーランドに配備する協定に両国が署名した。イランなどの脅威から、欧州の同盟国を守るというのがブッシュ政権の考え方である。

 イランは、ミサイル実験を繰り返し、国連安全保障理事会の決議を無視してウラン濃縮を続けている。射程内にある欧州の安全が気がかりなのはわかる。だが、それでも、急ぎ足での配備にはいくつも疑問が残る。

 まず、ロシアの反発が強いことだ。

 米国は、配備する迎撃ミサイルは10基ほどでロシアに向けたものではないと強調する。だがロシアは、MD網がこのまま広まれば自国の抑止力に影響する、と懸念する。配備をにらんで、ポーランドに隣り合うベラルーシと単一防空システムづくりで合意した。

 悪くするとMDが欧州での軍拡の引き金になりかねないのである。

 今は冷戦時代と異なり、国際安全保障で米ロが互いに相手を必要としている。イランにウラン濃縮の中止を迫る外交交渉には、米欧にロシアも加わっている。イラン向けのMD推進のせいでロシアとの亀裂が深まれば、対イランの外交力は弱まり、核開発を止めにくくなる。この悪循環は、欧州だけでなく世界の安全を脅かすだろう。

 グルジア紛争が署名を急がせた面もある。ポーランドはロシアへの警戒心を強め、軍近代化への支援と抱き合わせでMD協定の署名に踏み切った。だが、これも裏目に出るおそれがある。ロシアは、22日までに紛争地域から軍を撤退させると表明したが、期限内にそれを果たすかは予断を許さない。MD推進への反発は、グルジア情勢にも影を落としかねないのである。

 それでもMD配備を急いだのは、グルジア紛争による対ロ不信に加えて「ブッシュ政権のうちに合意を」という米国の事情もあったとみられる。

 資源の輸出などで力を盛り返したロシアとどう付き合うか。今求められるのはMDで対立することではなく、ロシアにグルジア撤兵を実現させ、協調関係を再構築することだろう。

 そのために、米国はまず、拙速なMD配備計画を凍結すべきである。

 米国で次期大統領をめざすオバマ上院議員は、米ロ間の中距離核戦力全廃条約を、地球規模の条約にするよう提唱している。イランや北朝鮮、インド、パキスタンなどの戦力の切り札は米ロが廃棄した中距離ミサイルだ。オバマ構想は、拡散したミサイルの脅威を軍縮で小さくしようというものだ。合意は容易ではないが、米欧ロの新しい協調につながると期待される。

 日本にとってもひとごとではない。近隣には核保有国の中国、ロシアや核実験をした北朝鮮が並ぶ。ミサイル防衛に偏らず、軍縮で安全保障を高める外交をもっと展開すべきだろう。