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紺青の海に活気と人情 青森・八戸(はちのへ)


なだらかな天然芝をたどると、草原の先に岩礁が迫る(種差海岸の種差芝生地)

 遊覧バスを葦毛崎(あしげざき)展望台前で降りると、そこが全長5・2キロに及ぶ種差(たねさし)海岸遊歩道の出発点だった。

 せめて半分は歩いてみようと決め、花の咲き乱れた坂道を下る。紺青の海がまぶしい。入り江ごとに波の荒ぶる岩礁や、穏やかな弧を描く波打ち際など、画帳をめくるように風景が変わって飽きない。やがて眼下に白砂の浜が見えてきた。

 貴重な鳴き砂の浜と聞いていたが、踏みしめても音がしない。「海がしけたあと、晴天が3日も続けば至る所で鳴りますよ」。浜で会った「はちのへ小さな浜の会」事務局長、中里栄久寿(なかさとえくじゅ)さん(65)が、やおら砂の表面を払い、はだしの足を踏み出す。キュッ、キュッと音が鳴った。

 それにしても清潔な砂浜だ。約20年前、会が清掃作業を始めた時はゴミだらけだったという。活動が住民の意識を変えた。「秋になると、海の底が見えるくらい水が澄んでくるね」。手つかずと見えた自然は、地元を愛する人たちによって守られていた。

 遊歩道の終点近くに種差芝生地がある。なだらかな緑の傾斜地をたどると、そのまま海にぶつかる。まるで海辺のゴルフコースだが、これは天然の芝生だ。磯遊びの子供たちが岩に登り、はしゃぎ声を上げていた。

 種差海岸への途中、海に突き出した蕪島(かぶしま)がある。ウミネコ繁殖地で国の天然記念物。約4万羽が飛来する繁殖期も終わり、蕪嶋神社の境内にある保護監視所では、年配のボランティア男性たちが穏やかな顔で座っていた。

 今年は狭い境内だけでも725の巣を確認した。全島で巣立ったのは約7000羽。「そりゃかわいいもんですよ。孫みたいで」と顔を見合わせて笑う。

 見せてもらうといい、と勧められた神社の拝殿で、天井を埋めるウミネコの群れに驚いた。8年前に地元の小学生115人が描いた、約60枚の絵をはめ込んでいる。床に寝て眺めると、1羽ずつポーズと表情が違って楽しい。神社では有名画家に頼む代わりに、明日を担う子供たちに共同制作してもらったという。力強く、ほのぼのした味わいがあった。

 毎年、ウミネコの一部は春まで八戸に残る。日本有数の漁港があり、餌に困ることもない。蕪島の近くで観光遊覧船「はやぶさ2」に乗ると、はたして群れが船尾を追ってきた。乗客が差し出す餌を、さっとくわえて飛び去っていく。

 船長の岩見富雄さん(72)は、乗客が1人でも船を出す。原油高で燃料代は3倍だが、「県外から来てくれた人に、時間がないと言われたら弱いんだよね」。コンテナふ頭や防波堤を近くで眺め、斜張橋をくぐる約40分の港内一周コースだ。

 市内ではほぼ毎日、夜明け前から陸奥湊駅前などで朝市が立つ。4年前から館鼻漁港で開かれている日曜朝市をのぞくと、6時前には漁船の並んだ岸壁にテントがびっしり立ち、「いらっしゃい、安いよ」と声が飛び交っていた。

 ホヤやアワビ、脂の乗った「八戸前沖サバ」など魚介類はもちろん、野菜や果物、衣類や古美術品まで。観光客はほとんどいない。潮風に吹かれ、人込みに身をゆだねながら歩くと、地元の人々の活気が乗り移ってくるように思えた。