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アフガン拉致―青年の志を無にしない

2008年8月28日

アフガニスタン東部で武装グループに拉致されたNGOの伊藤和也さんが遺体となって発見された。

 何と痛ましい知らせだろう。無事の帰還を願っていた家族や同僚たちにとっては最悪の事態だ。戦乱の地で民生支援に汗をかく日本の青年の志が、凶弾によって打ち砕かれてしまった。

 伊藤さんはNGO「ペシャワール会」の一員として、5年前に現地に入った。サツマイモやコメの栽培、灌漑(かんがい)施設づくりに取り組んできた。炎天下、50度近い暑さの中で続く用水路工事を見守る人々の姿に、「小さい子まで、水が来るのを待っているんだなと思います」と会報に記した。

 そんな伊藤さんの命を奪った犯行に、心の底から怒りを覚える。紛争地の人道援助NGOは、どの武装勢力からも中立的な立場を取ろうとする。なのに、なぜ襲われたのだろうか。

 ペシャワール会は中村哲医師がパキスタンで創設し、アフガンでは80年代から医療や農業支援の活動を続けてきた。9・11同時テロの前から、この国に根を下ろしてきたNGOだ。

 伊藤さんも現地語を習い、地元の人々と同じ衣服をまとうなど、共に生きているとの思いがあったに違いない。

 紛争地での活動は、常に危険と隣り合わせだ。それだけに、民生支援に入るNGOは現地の事情や治安情勢を入念に把握し、住民との信頼関係を築くことで身の安全を確保する。ペシャワール会はその点で長い実績があっただけに、それでも完全な安全はあり得ないことを改めて実感させられる。

 拉致された伊藤さんたちを奪い返すため、大勢の村人たちが捜索に加わったと伝えられる。厚い信頼と友情がはぐくまれていたのだろう。

 ちょうど10年前の夏、中央アジアのタジキスタンで、国連政務官として紛争解決にあたっていて凶弾に倒れた秋野豊・元筑波大助教授の事件を思い起こす。15年前にはカンボジアで、選挙監視の国連ボランティアだった中田厚仁さんが襲われて命を落とした。

 こうした人々に共通するのは、紛争に苦しむ人々を助けたい、支援したいという人道主義の熱い思いと志である。軍事によらない平和的国際貢献を担ってくれる、日本の貴重な財産だ。

 アフガンの治安はかなり悪化している。7年前にいったん崩壊したタリバーンが勢力を盛り返し、国際治安支援部隊だけでなく、各国のNGOにも犠牲が相次いでいる。

 アフガンではペシャワール会をはじめ、10近くの日本のNGOや国際協力機構(JICA)が活動している。事業継続のためには、要員の一時退避もやむをえまい。

 悲しみを乗り越え、出来る範囲でねばり強く活動を続ける。それが伊藤さんたちの志を生かす道だ。